正式名称は「サイバー戦に適用される国際法に関するタリン・マニュアル」。2013年3月に、北大西洋条約機構(NATO)の専門委員会であるサイバー防衛協力センター(CCDCOE)が公表した、サイバー戦争と国際法との関係性について記載した文書。国連憲章第51条は、「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と規定し、武力攻撃の被害国が、反撃を行う権利を認めている。しかしながら、サイバー戦において、どのような場合が「武力攻撃」であるのかは国際法上も定説をみないため、タリン・マニュアルは、その解釈例を示そうと試みるものである。07年に世界初の、国家を標的とした大規模サイバー攻撃をエストニアが受けたことから、08年にエストニアのイニシアチブで、首都タリンにNATOのサイバー防衛能力強化を目的としてサイバー防衛協力センターが設立され、その研究成果がタリン・マニュアルとしてとりまとめられたという経緯がある。あくまでも研究成果であって、NATOの公式見解ではないが、他に類例もなく、議論の出発点とされることがあるため注目されている。