マーケティング・コミュニケーションの理論では、認知が高まれば購買も高まるという基本的認識がある。しかし、成熟市場の中での不況という環境下で、認知は購買を保証しないのではないかという危惧が実務家の間に広がった。理由は次の通り。(1)成熟市場では主要な商品の認知はすでに高い。ゆえにそれ以上高めるのは容易ではない。(2)高い認知は汚れた認知、つまりマイナスの評価の認知をも含んでいる。(3)成熟市場では消費者はそれぞれに好きな商品を決めている。だから認知が高まってもトライが起こりにくい。(4)その事態は不況、節約意識によってさらに強化される。このために、意図的にトライアル(使用経験)層を作りだす戦略(T層戦略)や、店頭で選択されやすい状況を作る戦略が組まれるようになってきている。