視覚、嗅覚、聴覚など、消費者の感覚(センサー)に影響を与え、彼らの知覚や行動に影響を与えようとするマーケティング。温かい飲み物を持っている時、人々は見知らぬ人に親しみの感情を抱きやすくなり、気温が高かったり室温が暖かかったりすると、人々は集団に同調しやすくなるという。こうした無意識的な刺激の潜在力に基づき、マーケティング研究者たちは、感覚刺激による消費者の変化を解明しようと試みている(アラドナ・クリシュナ著、平木いくみ他訳『感覚マーケティング』、2016年、有斐閣)。感覚的な刺激は、商品やサービスに対する知覚や行動だけではなく、店舗評価や店舗選択などにも影響する。これまでにも、香りや音楽など個々の感覚刺激に関する研究は取り組まれてきているが、センサリー・マーケティングでは五感にかかわるすべての変数に注目して、統合的に検討しようとする点に特徴がある。