正式名称は、「原子力損害の賠償に関する法律」。1961年に制定された。被害者保護と原子力事業の健全な発展を目的としている。これらを達成するために、次の三つの仕組みを取り入れている。第1に、原子力事業者(原子力発電所の設置運転者等)に、無過失無限の一元的な賠償責任を負わせている。ただし、損害が「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じた」場合には、免責される。第2に、賠償の履行確保のために、事業者に対して「損害賠償措置」と呼ばれる一種の強制保険を義務づけている。現在、その額は1サイト(敷地)あたり最高1200億円である。第3に、被害者保護を確実にするための国の措置を規定している。賠償措置額を超える損害が発生した場合には、事業者による賠償責任の履行を確実とするために、国は事業者に対して「必要な援助」を行い、事業者が免責となる場合には被災者の救助及び被害の拡大防止のために「必要な措置」を講じるものとされる。ただし、「必要な援助」は、国の義務ではなく、国会議決の範囲内で行われる。東京電力福島第一原子力発電所事故では、この「必要な援助」を具体化するものとして、「原子力損害賠償支援機構法」が2011年8月に制定された。なお、同事故の発生から2年半以上経過したことを踏まえ、事故に伴う損害賠償請求権の時効を3年から10年へと延長する法案が、13年11月28日に衆議院本会議にて可決された。