大規模な原子力損害が発生した場合に、賠償責任を負う事業者に対する資金交付などを行うことにより、賠償の迅速・適切な実施と電力安定供給を確保するために設立された、認可法人。東京電力福島第一原子力発電所事故を契機として、原子力損害賠償支援機構法を根拠に、2011年9月に設立された。機構は福島原発事故に伴う損害賠償への対応を念頭において設立されたが、同事故に伴う損害はもとより、今後万が一生じるかもしれない巨額の損害をも視野に入れている。機構の資本金は140億円で、うち70億円を政府が、残りの70億円を原子力事業者など12社が払い込んでいる。機構による賠償支援は、原子力事業者による相互扶助の考え方に基づいており、事業者の払う負担金と国の発行する交付国債(現金を支払う代わりに発行する国債で、受取人は必要時に現金化できる)などを原資にして、賠償責任を負う事業者に資金を提供する。現在、5兆円の交付国債が機構に対して交付済みとなっている。機構は、交付国債を通じた援助を行った場合には、国債の償還がなされるまでの間、毎事業年度に生じた利益を国に返済(国庫納付)しなければならない。