農産物から加工食品まですべての食品を対象として、農薬(動物用医薬品、飼料添加物を含む)の残留成分が一定以上含まれる食品の出荷・流通を原則禁止する制度。2002年に中国産の冷凍ホウレンソウから、基準値を大幅に超える残留農薬や規制対象外の農薬が相次いで検出されたことを直接のきっかけとして、食の安心・安全志向の高まりを背景に06年5月末に施行された。残留してはならない農薬をリストで示し、食品ごとに設けた残留基準値を超えると、流通を原則禁止にしていた従前の制度(ネガティブリスト)では、指定外の農薬が含まれていた場合は規制の対象外になっていた。しかしポジティブリスト制度では食品ごとに使用農薬が指定されている。規制対象農薬は、現在世界で使われているものをほぼ網羅する799品目。安全性確保のための生産・流通履歴の把握の重要性から、大手のスーパーや外食産業、食品メーカーを中心にICタグやQRコードなどを活用したトレーサビリティーシステムの導入やチェック体制の整備が進んできた。また、生協(消費生活協同組合)や産直型通販業者の中には、以前から法規制よりも厳しい自主基準を設け、生産指導や情報開示に努めてきたところもある。しかし、中小の生産・加工業者の中には、情報把握や検査体制の不備が目立ち、対応に苦慮すケースもみられるシビアな状況となっている。