国際社会で伝統的に用いられてきた「平和」はラテン語のパックス(pax)で、これは「戦争のない状態」を意味している。ギリシャ語のエイレーネ、ユダヤ教のシャローム、アラブのサラームは「正義」を中心とした平和の概念で、ヒンズー教のシャンティは「内なる平和」を、仏教のアヒンサーは「非暴力・不殺生」を意味し、中国・日本における「和平、平和」は主として「調和」を意味する。今日でも国際社会における平和は武力紛争のない状態を意味しているが、今ではこれは消極的平和と定義され、積極的平和の実現が強調されている。積極的平和とは、貧困や飢餓の問題、支配と従属の問題、人権や環境の問題などを含み、国際社会のみならず国内社会をも対象とし、社会正義の実現を目的としている。