特にイランの脅威に対応するためにヨーロッパ全土を対象とするアメリカ/北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛。オバマ大統領は2009年9月に「欧州ミサイル防衛に関する段階的適応アプローチ(PAA)」を発表し、第1段階(11年まで)で海上配備イージス艦のSM3(ブロックIA)を配備し、第2段階(15年まで)で海上/陸上配備のSM3(ブロックIB)を、第3段階(18年まで)でSM3(ブロックIIA)を、第4段階(20年まで)でSM3(ブロックIIB)を配備することを予定している。10年11月のNATO首脳会議で、これらはNATOの任務であると位置づけられた。当面海上配備を進め、15年にルーマニア、18年にポーランドに迎撃ミサイルを配備することとなっている。ロシアとの協力の下に進めることが予定されているが、協力の内容に関してロシアは一体的な運営を主張しているのに対し、アメリカ/NATOは情報の共有などを主張しているため対立が続いている。特に第3段階以降において、このミサイル防衛がロシアの戦略核抑止力の脅威となることをロシアは危惧しており、そのための法的な保証を求めている。ここでの対立は、米ロの核軍縮全般の進展に大きな影響を与えるものとなっている。