2011年から続くシリアの内戦において、13年春に化学兵器が使用されたという疑惑が発生したため、国際連合(国連)は同年8月に現地調査団を派遣することを決定した。シリアの化学兵器使用疑惑に対して、アメリカ、イギリス、フランスの3国はアサド政権に対する軍事介入を公言し、緊張が高まった。しかし9月14日にはアメリカとロシアの間において、14年半ばまでにシリアの化学兵器を完全廃棄する枠組みに関して合意が達成され、シリアへの軍事介入は回避された。さらに翌15日には、国連調査団の報告書が潘基文(パン・ギムン)国連事務総長に提出され、シリアにおいてサリンが使用されたことが確認された。9月27日に国連安全保障理事会(安保理)は、シリアに対して化学兵器の廃棄を義務づける決議を全会一致で採択し、シリアはその決議を履行することを表明した。決議では、シリアの化学兵器の使用が国際法違反であるとされ、14年半ばまでのシリアの化学兵器の全廃や同年1月までの査察開始を柱とする化学兵器禁止機関(OPCW)の決定を支持し、シリア政府にその決定の順守と査察協力を義務づけている。10月11日にはOPCWのノーベル平和賞の受賞が決定した。同月14日にはシリアは化学兵器禁止条約に加入し、締約国は190カ国となった。シリアに関しては化学兵器使用およびその廃棄が計画通り実施されることが重要であるとともに、内戦状況を終結させるというより大きな課題が残されている。