ヨーロッパ中世の封建社会の崩壊に際して、絶対君主の排他的な統治権を確立するために唱えられ、やがて国内の民主化を経て、領域や国民に対する支配権を意味する対内主権と、国家の独立権としての対外主権への分化を見た。国家はいかなる外部的な権力にも服さず、主権平等原則は国の大小にかかわらず国家が法的に平等であることを意味する。このように主権は国家のすべての権利・権能の総称であり、歴史的には国際法の規律からも免れる絶対的権力とされた時期もあった。しかし19世紀半ば以降は、自ら同意した条約を守り加盟する国際機構の権限に服するほか、国家の基本的義務も当然に尊重すべきと考えられるようになった。他方、2005年にフランスとオランダの国民投票で否決された憲法条約を経て、新たに基本条約を採択した欧州連合(EU)に代表される統合化の過程で、国家主権の一部の機能が制約される現象も認められる。また戦後占領や政府の崩壊などからも主権行使が不可能となるが、イラクやアフガニスタンのように新政府が樹立されると主権機能は回復される。