海洋法は国際法の中でも古くから慣習法によって規律されてきた分野であるが、交通・輸送の手段としての海の伝統的利用から、20世紀半ば以降資源としての側面が注目を集めるようになった。国連は1958年に第1次海洋法会議を開催して海洋法4条約を成立させたが、この時解決に至らなかった問題やその後の発展に対応するため、73年に始まる第3次海洋法会議における長期交渉の末、82年に成立した海洋法に関する包括的多数国間条約である。条約は従来の領海と公海の二分原則を修正して、排他的経済水域(EEZ)という新たな海域を導入し、また深海底における資源開発の画期的な国際制度を実現した。しかし深海底制度に対する先進国の反対から条約の発効は遅れ、その内容を修正する実施協定の94年の成立により、同年11月に条約は発効した。日本は96年に批准し、中国や韓国などと関連海域の境界設定を交渉してきた。アメリカなど世界の4分の1ほどの国が未批准である。