当事者の合意に基づき事件ごとに法廷を設立して審理し、結論が判決として当事者を法的に拘束する国際法上の伝統的な裁判。仲裁裁判に付託する合意(コンプロミー)の締結は紛争発生後を原則としたが、一定の紛争を付託する合意をあらかじめ条約中に定めることも多くなり、19世紀には裁判条約の締結や裁判条項の挿入が慣行化した。しかし事件ごとに裁判基準や手続きを定め、特に裁判官の選定という当事者の利害にかかわる問題での挫折が多く、あらかじめ付託合意があっても裁判の実現に至らないことも多かった。他方費用や時間がかからず、当事者の自主性が尊重されるなどの利点から、現在でも仲裁裁判は頻繁(ひんぱん)に利用されている。国連国際法委員会は1958年に仲裁手続に関するモデル規則を作成し、仲裁裁判のための裁判官名簿を常備する常設仲裁裁判所や、世界銀行の主導下に締結された条約により設置された投資紛争解決国際センター(ICSID)が、仲裁裁判の実現を容易にする活動をしている。日本はミナミマグロ事件でオーストラリア・ニュージーランドと争い、2000年の判決により100年ぶりの仲裁裁判での勝訴を実現した。