オランダのハーグに置かれる、国連の主要司法機関としての常設的な国際裁判所。国連総会と安全保障理事会(安保理)で選出される任期9年の15人の裁判官で構成され、2003年から小和田恒が(09年からは所長に)就任している。裁判の当事者は国家のみで、裁判を行える権能である裁判管轄権は国家にとって義務的ではなく任意とされる。従って仲裁裁判と同様に付託合意に基づくか、ICJへの付託を義務的とする裁判条項を含む条約の締約国同士の紛争、法律的紛争の付託を認める選択条項の受諾をすべての当事者が宣言している範囲において、一方的な裁判の請求が可能とされる。ただし提訴された国は先決的抗弁を行って管轄権を争う場合が多く、さらに審理の一部または全部を欠席することさえ見られた。また裁判所は仮保全措置の指示や第三国の訴訟参加の申請についても、付随的管轄権をもつ。判決は当該事件の当事者のみに対して法的拘束力をもち、上訴は認められない。判決が履行されない場合は国連安保理への付託が可能だが、1986年のニカラグアに対する軍事的活動事件のように、常任理事国による判決の不履行には拒否権に妨げられて実効的な措置をとれないことが予測される。他方、国連と専門機関からの諮問に応えて、ICJは勧告的意見を与えることができる。判決とは異なり意見は法的拘束力に欠けるが、高い権威が認められ、ほとんどの場合要請機関によって尊重されてきた。しかし96年の核兵器使用の合法性事件や2004年パレスチナ分離壁事件のように、政治的に重要な意見については課題が残されている。