国際法に従って個人の犯罪を裁く国際的な裁判所。第二次世界大戦後、ニュルンベルクと東京に設置された国際軍事裁判所を経て、1948年の集団殺害(ジェノサイド)防止条約は国際刑事裁判所設立を予定していた。しかしその後も裁判所は設立されず、冷戦終結後の90年代に内戦が頻発するなか、国連安全保障理事会は旧ユーゴとルワンダにおける国際人道法違反の個人を裁く刑事裁判所(ICTY、ICTR)を決議により設置した。さらに個別紛争に限定されない常設的な裁判所の設立が急務とされ、国連国際法委員会が起草した国際刑事裁判所(ICC)規程が98年に成立した。発効に必要な批准・加入を得てオランダのハーグに設置されたICCは、少年を戦闘要員にしたコンゴ(旧ザイール)の武装勢力幹部に対する公判を開始した。またスーダン・ダルフールの住民迫害についても、元閣僚や民兵指導者の訴追に加えて、現職のバシル大統領の国際逮捕状を発給した。日本は2007年10月にICC規程への加入を行い、資金の最大拠出国として年額30億円程度を負担し、尾崎久仁子が10年から裁判官に就任している。これに対して規程への署名を撤回したアメリカは、他の加盟国との間で米兵の犯罪に免責を与える二国間協定の締結を進め、応じない国に対する経済援助を停止した。