戦争違法化の歴史は20世紀に始まる。1907年の第2回ハーグ平和会議で成立したポーター条約は、債務回収のための武力行使を初めて禁止した。第一次世界大戦後に設立された国際連盟では、集団安全保障制度の導入により戦争一般の規制が実現されたが、加盟国が最終的に戦争に訴えることは合法とされた。28年の不戦条約の締結によって、自衛の場合を除くすべての戦争が国際紛争解決の手段として放棄され、同時に紛争の平和的解決が締約国に義務付けられたが、それを確保するための制度は整えられなかった。第二次世界大戦後の国連では、その目的と両立しない武力行使や武力による威嚇(いかく)は禁止され、違反には憲章第7章の「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」がとられる。違反国に対する制裁としての軍事的措置と自衛のための武力行使を除いて、武力行使禁止は慣習法上も確立したとされる。しかし現実には国連安全保障理事会(安保理)における不一致から軍事的措置が決定されたことはなく、冷戦終結後も多国籍軍による武力行使を容認するという形でしか、違反国への軍事的な制裁は認められていない。また99年のNATO(北大西洋条約機構)軍によるコソボ空爆や2003年のイラク戦争は、安保理による武力行使容認決議もなかったため、その合法性が問われている。