侵略など外国からの違法な攻撃に対して自国を防衛するため、緊急の必要がある場合に限り武力を行使できる国家の権利。国家の基本権である自己保存権から発展し、第一次世界大戦後、実定国際法上の権利として確立されてきた。国連憲章では本来の個別的自衛権と並んで、集団的自衛権も加盟国の固有の権利として認められた。ただし自衛権発動の要件は加盟国に対する武力攻撃が発生した場合に限られ、加盟国がとった措置は直ちに国連安全保障理事会(安保理)に報告されると同時に、安保理が必要な措置をとるまでの間に限定される。それでも武力行使禁止の例外として、ほとんどの武力紛争に際して自衛権を援用した正当化が試みられる。特に発動要件を緩和して、武力攻撃の脅威のみがある場合の先制自衛に対しては、自衛権の濫用(らんよう)を招くとして批判が多い。2003年のイラク戦争についても先制自衛としての正当性が米英により主張されたが、大量破壊兵器の開発や存在などの脅威が誇張されたことが明らかとなった。また自国兵士の拉致に対応した06年のイスラエルによるレバノン攻撃も、均衡を欠く過剰な自衛権行使として非難された。