水銀による地球規模の汚染や健康被害を防ぐことを目的に、採掘や使用、管理、輸出入などを包括的に規制する条約。2013年10月に熊本市で開催された外交会議で採択され、日本をはじめ欧州連合(EU)を含む92カ国・地域が署名した。正式名称は「水銀に関する水俣条約(Minamata convention on mercury)」。条約の発効には50以上の国・地域の批准が必要で、国連は16年の発効を目指す。前文では、水俣病を重要な教訓とし、水銀の排出を世界的に抑え、健康被害や環境汚染を防ぐことを明記している。主な内容は次の通り。(1)20年以降は体温計や血圧計、電池や蛍光灯など9種類の水銀含有製品の製造や輸出入を原則的に禁止する、(2)発効から15年以内に水銀鉱山の採掘を禁止し、新規の鉱山開発は認めない、(3)水銀を大気に排出する石炭火力発電所を新たに建設する場合には、排出を抑える最良の技術の導入を義務付ける、(4)途上国への資金援助を、開発途上国や経済移行国の環境問題支援をしている地球環境ファシリティーに要請する。しかし、小規模な金採掘における水銀使用は完全には禁止しないなど、課題も残した。日本では、亜鉛や銅などの金属製錬で出た汚泥や、使用済み蛍光灯などから12年度には年間約90トンの水銀が回収され、84トンが海外に輸出されている。条約が発効すれば、輸出規制に加え、海外需要の大幅な減少が見込まれるため、国内法を整備し、余った水銀を安全に管理する必要がある。