文化遺産および自然遺産を人類全体のための世界の遺産として、損傷、破壊などの脅威から保護し、保存するための国際的な協力および援助の体制を確立することを目的とした条約。正式名称は「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(Convention concerning the protection of the world cultural and natural heritage)」。1972年11月にパリで開催された第17回ユネスコ総会で採択され、75年12月に発効。日本は92年9月に発効。保護の対象は、記念工作物、建造物群、遺跡、自然の地域などで普遍的価値を有するものとされる。国際連合教育科学文化機関(UNESCO ユネスコ)の世界遺産委員会に候補を申請し、委員会に認定されると世界遺産リストに登録される。締約国は、自国内の世界遺産を保護する義務を負い、また、そのための国際協力が求められる。途上国の世界遺産保全のためには、先進国などの拠出金による世界遺産基金が設立されている。世界遺産は、「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」に分類され、2015年3月現在、それぞれ779、197、31で、合計1007の世界遺産がある。また、自然災害や武力紛争、都市開発などで、危機にさらされている「危機遺産」は、15年3月現在で46ある。日本には、「法隆寺地域の仏教建造物」「姫路城」など14の文化遺産と、「屋久島」「白神山地」など4つの自然遺産の合計18があり、文化遺産には、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」(13年登録)と「富岡製糸場と絹産業遺産群」(14年登録)が含まれる。15年3月現在、締約国は191カ国。