人種差別のない社会を実現することを目的とした条約で、第1条1で、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる」差別を対象とするとしている。正式名称は「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」。1965年12月に国連総会で採択され、69年1月に発効。日本は95年12月に締結し、96年1月に発効。条約は、目的実現のために、おもに次のような義務を締約国に課している。(1)国や公的機関による差別だけでなく、個人、集団、または団体による人種差別を除去する義務、(2)人種差別を正当化しまたは扇動するなどの宣伝および団体を法律によって禁止し処罰する義務、(3)人種差別の被害者に対する効果的な救済を確保する義務、 (4) 人種的偏見と人種間の理解を促進する措置をとる義務。なお日本は、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」と「人種差別の扇動」などに処罰立法措置をとることを義務づけた規定である第4条(a)(b)に留保を付している。その理由として、憲法の保障する集会、結社、表現の自由を不当に制限するおそれなどを挙げている。条約の実施には報告制度、国家通報制度および個人通報制度があり、その運用は人種差別撤廃委員会に委ねられている。2014年9月、委員会は日本に対して第4条(a)(b)の留保の撤回、ヘイトスピーチやヘイトクライム、アイヌ問題、沖縄問題、被差別部落問題、在日韓国・朝鮮人問題、移住労働者問題などへの取り組みが不十分だと指摘した。15年3月現在、締約国は177カ国。