難民問題に対処するため、従前の国際協定を修正・統合し、それらの適用範囲と保護の拡大を目的とした条約。正式名称は「難民の地位に関する条約」。1951年に開催された外交会議で採択され、54年に発効。日本は82年に加入した。67年に採択された「難民の地位に関する議定書」により補充される。ここでいう難民とは、人種、宗教、国籍、政治的意見などを理由に迫害を受けるおそれがある国籍国の外にいる者であって、かつ、その国籍国の保護を受けることができない者または迫害による恐怖を有するために保護を望まない者と定義される。難民の待遇は、(1)自国民に与える待遇と同一の待遇(内国民待遇)、(2)同一の事情の下で外国の国民に与える待遇のうち最も有利な待遇(最恵国待遇)、(3)同一の事情の下で一般に外国人に与える待遇よりも不利でない待遇(一般外国人並みの待遇)、に分けられる。(1)には裁判を受ける権利や初等教育などが、(2)には結社の権利および賃金が支払われる職業に従事する権利が、(3)には住居に対する権利や初等教育以外の教育などが該当する。加えて、行政上の措置として、難民には身分証明書または旅行証明書の発給、移動の自由、財産の移転の自由などが保障される。締約国は、生命・自由が脅威にさらされていた領域から直接来た難民であって、許可なく当該締約国の領域に入国し滞在する者に対して、不法入国や不法滞在を理由として刑罰を科してはならない。また、締約国には、迫害のおそれのある国へ難民を追放および送還してはならないとするノン・ルフールマンの原則が課される。日本における年間難民認定者数は、2012年は18人、13年は6人と、年間2万5000人以上のアメリカやヨーロッパ先進諸国と比べて際立って少ない。15年3月現在、締約国は145カ国。