中東の政治地図の変化が次第に明らかになってきている。イラクのフセイン政権は倒れ、エジプトのムバラク政権の影響力も低下し、アラブ世俗国家の退潮が目立つ。対して力を伸ばしているのはイラン、サウジアラビア、トルコなどである。イランは核開発問題を巡り、西側との対立を深めるが、豊富な石油資金を背景にシーア派勢力の支援者として、イラク、レバノン、パレスチナ等で影響力を拡大していると見られる。また、イスラム厳格主義を採るスンニ派のサウジアラビアは、イランへの対抗もあり、前面に出てスンニ派のてこ入れに力を注ぎ始めた。また、世俗主義を国是としてきたトルコでも、イスラム派政党の公正発展党が2002年に政権を掌握、07年には軍部の妨害にもかかわらず大統領選挙でも勝利した。現政権は欧州連合(EU)加入を目指しているが、キプロス問題など障害も大きく、クルド人問題を含めてイスラム圏との結びつきを強めつつある。イラクの治安問題や、パレスチナ和平問題について、これら諸国の関与が重要な要因になるであろう。