第一次世界大戦後の欧米では、それまでの国際法や外交史の研究に対して、国際関係を政治現象として研究する新たな分野が登場した。この分野の登場は戦争の防止や廃棄を目指すという強い目的意識によって特徴づけられていた。戦争の根本原因は複数の主権国家が併存する状況にあると見て、国際機構の強化、軍備の削減ないし撤廃、国境を越える機能的連帯などが提唱された。しかし第二次世界大戦が迫ってくると、軍縮や国際連盟などの国際機構の無力が意識されるようになり、国際政治の本質を国家間の権力闘争と捉えた上で、平和はあくまで力に支えられた国際秩序の確立の結果に過ぎないという主張が強まった。こうした主張をなす論者は、それまでの国際政治研究をアイデアリズムないしユートピア主義と批判し、政治における権力闘争の現実を否定しないという意味で自らの立場をリアリズムと呼んだ。主な論者にE.H.カー、ウォルター・リップマン、ハンス・モーゲンソー、ジョージ・F.ケナンなどがいる。リアリズムはアメリカやイギリスの国際政治理論の主流として1960年代までに定着し、アイデアリズムの系譜は国際法や国際機構などの分野に重点を移した。