リアリズムは第二次世界大戦の勃発や冷戦といった国際政治の過酷な「力の現実」を意識して提起されたが、1960年代になると特にアメリカで実証的社会科学理論としての有効性に疑問が投げかけられるようになった。それに応える形で登場したのがネオリアリズムであり、構造的リアリズム(structural realism)とも呼ばれる。その代表的論者K.ウォルツは、国際政治理論の課題を、一定の前提から諸国家の行動の規則性を導き出すことと設定し、世界政府が存在しない無政府状態という構造下で各国家が自国の安全保障を追求する結果、勢力均衡状態が繰り返し形成されることをもって規則性と捉えた。ウォルツが導入した方法論はアメリカの国際政治理論研究に大きな影響を与えた。ネオリアリズム自体は、構造と規則性のみに着目して変化を説明しないという説明領域の狭小さや冷戦の終焉(しゅうえん)という重要な変化を予測・説明できなかったことなどが批判されたが、今日でも特にアメリカの国際政治学では支配的な学説をなしている。