国家内部の多様な個人・集団と、それらが織り成す国境を越えた社会・経済・文化的紐帯という国境横断的な関係(transnational relations)を分析単位とし、それが国家間関係に及ぼす影響を重視する理論的系譜。国家間協調の可能性をリアリズム以上に積極的に探ろうとする点ではアイデアリズムの系譜も引き継ぐ。1950年代にヨーロッパ統合の過程に着目した統合論(theory of integration)が研究の端緒となり、70年代において国境横断的な関係の深化が国家間の相互依存関係を強めていることを指摘した相互依存論(theory of interdependence)に結びついた。この指摘はやがて、国際政治と経済の相互作用をテーマとする、国際政治経済学(international political economy)という新しい研究分野の定着につながった。特に相互依存を管理する広義の制度として国際レジーム(international regime)の分析を進め、80年代にはリベラリズムの系譜を受け継ぎつつ国家を中心的な分析単位としたネオリベラリズム(neo-liberalism)ないしリベラル制度論(liberal institutionalism)と呼ばれる学派も登場した。90年代に入ると、冷戦の終焉(しゅうえん)や国内体制の転換を受けて、市場経済化やグローバリゼーション、民主主義体制と国際政治の関連などに関心が寄せられるようになった。