多大な惨禍をもたらした第一次世界大戦の結果、勢力均衡に代わるべく提唱された安全保障システム。すべての国が紛争を平和的に解決することを誓約し、その誓約に違反して武力を行使した国家を侵略国と見なし、他のすべての国による反撃を義務付ける体制である。国際連盟や国際連合は集団安全保障の原理に基づいて構想され、戦争を防止することが期待された。しかし実際には集団安全保障は期待通りには機能しなかった。現代では国家間の国力の差が大きいので、強国に対して制裁を行うことは困難だし、自国の利害を離れて制裁に参加することはどの国も躊躇(ちゅうちょ)する。また、集団安全保障を実行することはすべての戦争を世界戦争にしかねない。集団安全保障が機能するのは大国間で意見が一致する場合のみであり、勢力均衡下での大国支配と事実上さほど変わらないことになる。