集団安全保障の実効性には疑問がぬぐえないため、1945年に合意された国際連合憲章第51条においては、各国の自衛権と同時に、他国の自衛を支援し、相互に防衛で協力する集団的自衛権が認められた。冷戦によって国連が機能不全に陥ると、集団的自衛権に基づく国家間の協力が多くの国の安全保障政策の柱となった。集団的自衛関係は、勢力均衡体制での同盟と基本的な性質を同じくする。たとえば同盟には「見捨てられ」と「巻き込まれ」の二つのリスクが常につきまとうが、それは今日の集団的自衛関係においても存在する。ただし文化的等質性や各国の国力の均等性を前提として柔軟に組み換えられた近代ヨーロッパの同盟に対して、現代の集団的自衛関係は価値の共有や国家間の力の不均衡を前提とする場合が少なくない。日本では憲法上、集団的自衛権は行使できないというのが現在の政府見解であるが、日米安保条約の締結そのものを集団的自衛権の行使と見なすことも可能であり、国内的説明と国際的説明の齟齬(そご)に苦しむ場面がしばしば見られる。