破綻(はたん)国家とは、政府が統治能力を喪失し、国家としての一体性を保つことが困難になった国家を指す。そこではしばしば、内戦や虐殺、飢餓、疫病などが深刻化し、大量の難民の発生、流出なども見られる。破綻国家の背景にはまず、第二次世界大戦後に独立を果たした途上国の多くが旧宗主国によって引かれた境界線と植民地体制を引き継ぎ、国民的忠誠心を欠いた多民族社会と不十分な行政機構しかもたないことがある。たとえば、アフリカ大陸における国境線の約44%は直線で、現地の民族集団、宗教集団の多くが分断される結果となっている。さらにグローバリゼーションはヒト、モノ、カネ、情報の自由な流通をもたらすが、一定の公共的基盤がない社会では犯罪や対立を呼び寄せる源泉ともなり、脆弱(ぜいじゃく)な国家にいっそうの圧力をかける。加えて破綻国家が生じた場合に、難民流出、テロの根拠地化や疫病の発生源となると、グローバリゼーションを通じて世界全体の脅威をもたらしうるのである。