産業革命以降、兵器の破壊力の増大、軍事作戦の高速化、軍事費の高騰といった現象が進行し、軍備そのものが危険であるという見解が広まり、20世紀に入ったころから、軍備を削減する軍縮(disarmament)を求める声が無視できなくなった。しかし実際には軍縮はそれほど成功しなかった。どういう基準で軍備を減らすべきかを決めることが難しく、仮に軍縮に成功してもかえって軍事バランスが不安定化し、緊張の増大につながりうることが分かったためである。軍備はいかに危険でも、戦争は人間が起こすので、軍備を減らせば暴力の程度や頻度が低下するとは限らない。冷戦期には軍備を減らすことよりも、敵対する国家の間でコミュニケーションを高めて軍備が不必要に緊張を高めることを避ける軍備管理(arms control)や、危機状況が双方の望まない衝突になることを避ける危機管理(crisis management)という考え方が発達した。米ソの間の戦略核兵器や対弾道ミサイルの制限や首脳間のホットラインの開設は、こうした考え方に基づいていた。1970年代にはこうした考えをさらに広げて、平時から軍備に関する情報を交換し、誤認からくる衝突を回避し、緊張の緩和を目指す信頼醸成措置(confidence-building measures)も重視されるようになった。具体的な措置としては、ホットラインの開設や、軍事演習の相互通告や査察などによる軍事的透明性の向上、などがある。