地球温暖化条約京都議定書からの離脱、ABM(対弾道ミサイル)条約からの脱退、包括的核実験禁止条約(CTBT)や対人地雷禁止条約の批准拒否、国際刑事裁判所(ICC)に対する署名拒否など、ブッシュ前政権下ではアメリカの単独主義的行動が目立った。イラク戦争は単独主義の最も顕著な一例と見なされている。こうしたアメリカの単独主義的姿勢の背景には、冷戦終焉(しゅうえん)の後、アメリカが軍事、経済、技術、文化などで突出した国力を持つ唯一の超大国になったという国際システムの単極構造(unipolarity)と、アメリカが世界の中で独特の価値と使命をもつ国であるという伝統的なアメリカ例外主義(exceptionalism)の二重の要因が作用していると考えられる。アメリカは世界に対して特別の責任と使命を有しており、他国との協調はそれ自身が目標にはならないと考えるのである。ブッシュ前政権に対して影響力をもつとされた新保守主義者(ネオコン)にこうした見解は顕著だが、大洋に囲まれたアメリカが国際政治へ継続的に関与するためには卓越した力と使命感が必要であり、アメリカの単独主義的傾向はある程度は不可避であろう。この前提の上で、アメリカにいかに国際協調的に行動させるかは、アメリカとその他の世界双方の課題である。