アメリカの国際政治学者、ジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授が提唱した概念。ナイは冷戦終焉(しゅうえん)期、当時のアメリカ衰退論に反対して、たとえアメリカの軍事力や経済力といったハード・パワーが相対的に落ちてきているにしても、自国の価値観を他国にとっても望ましいと感じさせ、協調を生み出すソフトな力では世界をリードしていると指摘し、この力をソフト・パワーと呼んだ。2004年にナイ教授は『ソフト・パワー』と題する著作を公刊し、現代の国際政治におけるこの力の重要性を改めて説くとともに、ブッシュ政権(当時)が武力に頼り過ぎて他国に脅威を感じさせ、アメリカのソフト・パワーにマイナスの影響を与えていると批判した。さらに近年、アメリカがハード・パワーとソフト・パワーを賢明に組み合わせることの重要性を説き、スマート・パワー(賢明な国家)という概念を提唱、ヒラリー・クリントン国務長官も議会公聴会でこの言葉に言及した。