ドーハ・ラウンドは1995年に発足した世界貿易機関(WTO)の下での初めての多角的貿易自由化交渉であり、2001年11月にカタールの首都ドーハで提起され、02年1月から3年の期限を設定して交渉開始が決定された。しかし農産物市場アクセス、国内農業補助、非農産品市場アクセスの問題をめぐって交渉は難航し、合意期限の延長を繰り返してきた。06年7月、ジュネーブでの主要6カ国(アメリカ、日本、EU、オーストラリア、インド、ブラジル)閣僚会合でも合意成立には至らず、ラミーWTO事務局長は交渉凍結を宣言した。07年1月交渉は再開されたが、08年7月の主要国会合もアメリカとインド、中国の対立が解けず決裂、12月にも市場開放の大枠を決めるモダリティー合意を実現する動きがあったが結局実らず、アメリカのオバマ政権発足後に交渉は持ち越された。多国間貿易レジームにおける自由化交渉の遅滞から特定国間の自由貿易協定(FTA)が増大する傾向が強まっており、世界経済が危機に瀕する中、保護主義的傾向が強いと見られるアメリカの民主党政権がWTO交渉にどのような姿勢で臨むかが注目されている。