2009年1月20日、第44代アメリカ大統領としてバラク・オバマが就任した。47歳と就任時の年齢では史上5番目に若く、かつ初めての黒人系大統領として、オバマの就任はアメリカ史に一つの画期となった。オバマは04年の民主党大会で国民的統合を訴えて注目され、イリノイ州出身の上院議員となったが、1期目の途中で大統領選に出馬、本命と目されていたヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク出身でかつビル・クリントン元大統領の夫人)との間で歴史的な接戦の末に民主党予備選挙を勝ち抜き、民主党大統領候補となった。大統領選ではジョン・マケイン共和党候補と争い、当初はアラスカ出身の女性州知事ペイリンを副大統領候補に指名したマケインに迫られたが、08年9月大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻(はたん)したことをきっかけに深刻化した経済危機に際して明確な対応策を示せなかったマケインに対し、従来の共和党政権の政策の失敗と政府による救済策をとる方針を示したオバマが優位に立ち、選挙では大勝した。イラクからの就任後16カ月以内のアメリカ軍撤退、対立する諸国との対話、多国間主義の強調などブッシュ政権下で批判されたアメリカの単独行動主義を是正する外交方針を示し、政権にはヒラリー・クリントンを国務長官に迎えるなど高評価の人材を集め、国際的には高い期待を受けている。また、ケニア人留学生と白人女性の子供として生まれ、貧しい少年時代をハワイやインドネシアで過ごし、エリート教育を受けて演説に優れるオバマは21世紀型のアメリカン・ドリームを体現していると見る向きもある。しかし大恐慌以来の世界経済危機の渦中にあって、いかに経済を立て直し、かつイラクの他にアフガニスタンや中東、北朝鮮などの困難な外交課題に対処するのか、期待の高さに応える結果を出すには極めて厳しい現実が待ちかまえている。