2000年から2期8年の任期を終えたプーチン大統領に代わり、08年3月、メドベージェフがロシアの新大統領に選出された。しかしメドベージェフはプーチン側近の一人であり、当選もプーチンの支持を受けての結果であった。さらにプーチンが大統領から首相へと異動したことで、事実上、プーチンが主導権を握る体制は続くものとみなされた。憲法の規定上、大統領の3選は許されておらず、プーチンが自らの権力維持のために改憲を行う体裁をきらったために採られた便法であると見ることもでき、事実、08年末には大統領の任期を6年とする憲法改正が実現する運びとなったが、この変更は、プーチンが次回の大統領選挙で返り咲く可能性を示唆したものと受けとめられている。事実、プーチンはロシアで極めて人気が高く、本人も大統領選への出馬を否定していない。プーチン大統領時代、ロシアはソ連崩壊後の混乱を脱し、エネルギー輸出による外貨獲得を基軸に経済成長を実現し、「強いロシア」復活の道を歩みつつあると認識された。同時にロシアは威圧的な対外姿勢を強め、アメリカによる東欧へのミサイル防衛施設配備に激しく反発し、08年2月のコソボ独立宣言にも反対、米欧と対立した。さらに同年8月には親西側指導者に率いられたグルジアと交戦、隣国ウクライナにもエネルギー供給で露骨に圧力をかけ、国内の動揺を誘っている。しかし折からの世界経済危機で外資の引き揚げ、エネルギー価格の急落等のあおりを受け、ロシア経済も急激に失速しつつあり、ロシアの基本的な問題である人口減少にも歯止めがかかっておらず、プーチンの「強いロシア」路線には翳(かげ)りも見えている。