2008年8月6日から24日まで、中国で北京オリンピックが開催された。01年の開催決定以来、中国政府は1978年に開始された改革開放政策30年目にその成果を記念する国家的事業と位置づけてきた。しかし2008年に入ってインフレが高進して社会的混乱が目立ち始め、5月には四川大地震が起き、さらに3月のチベットでの暴力事件、7月から8月にかけてのイスラム系を名乗るグループによる爆弾テロ事件も発生し、国内の緊張は高まっていた。国際的にも相次ぐ食品毒物混入事件やチベット政策を巡って批判が高まり、世界各地を巡る聖火リレーでは活動家による妨害や中国側の厳重警備などで論争を招き、西側諸国の中にはオリンピック・ボイコット論も生まれた。しかし胡錦濤政権はチベット指導者ダライ・ラマ14世との対話再開などで国際世論をやわらげ、日本の福田康夫首相(当時)を含む100人以上の各国首脳が開会式に出席した。大会そのものは中国選手が51の金メダルを獲得する一方で総メダル数ではアメリカが110と中国の100を上回るなど、中国の圧倒する内容ではなく、中国人観客のマナーも含めて大過なく終了した。しかし開会式では少数民族の衣装を漢民族の子供が身につけて登場するなどの作為も施され、大規模な演出とともに中国の体質への違和感も強める効果をもった。オリンピック後には世界経済危機の影響で中国も景気後退が深刻化し、北京オリンピックは政治的にも経済的にも中国にとっては画期となるイベントとなった。