世界第2位の経済規模となり、急速に軍備も増強する中国の対外姿勢に世界の関心が高まっている。かつてトウ小平は改革開放を優先し、1989年の天安門事件後に「韜光養晦(目立たないようにして力を蓄える)」路線を遺訓として与えたとされる。江沢民、胡錦濤(こ・きんとう)はこの路線を受け継ぎ、多国間協力への積極参加、近隣諸国との協調、平和的台頭論の提唱などを行ってきた。しかし2008年夏の北京オリンピックや直後のリーマン・ショックの後、世界的影響力の拡大に自信をつけた中国は自己主張を強め、強引で非妥協的な姿勢が目立ち始めた。これまで棚上げにしてきた周辺海域の島嶼(とうしょ)への領有権を公然と主張し、尖閣諸島沖で中国漁船が日本の海上保安庁船舶に体当たりして船長が逮捕拘留された事件では激しく日本を非難した。ミサイル・海空兵力の増強を進め、反体制知識人、劉暁波(りゅう・ぎょうは)のノーベル平和賞受賞に対しては露骨な圧力外交を展開するなど欧米や周辺国の警戒心が強まっている。今後、習近平国家副主席への権力継承が進むと見られるが、軍部の発言力の増大、経済成長に伴う国内矛盾、民族主義的な世論が中国外交にどのように影響するかが注目されている。