2010年12月、チュニジアの街角で露店を営んでいた若者が警官に侮辱され、抗議の焼身自殺を行った。この事件がインターネットを通じて広く知られ、1987年から独裁を続けるベンアリ政権打倒デモへとつながり、2011年1月には政権は崩壊した(ジャスミン革命)。長期独裁政権のあっけない瓦解は中東各国に衝撃を与えた。特に1981年以来ムバラク大統領が独裁政権を続けるエジプトでは大規模反政府デモが発生、2011年2月にはムバラク政権も倒れた。その後も民衆の政権打倒運動はソーシャル・ネットワーク・メディアなどを通じて中東各地に波及し、「アラブの春」と呼ばれるようになった。リビアでは同2月からカダフィ政権への反乱が発生し、3月にはフランスなどが主導するNATO軍が介入、8月には反乱軍が首都トリポリを制圧、10月にはカダフィが殺害された。11年3月にはアサド大統領の独裁が続くシリアでも反乱が勃発、軍が鎮圧に乗り出すが情勢は混沌としたまま推移している。一連の政治変動の一方で、9.11事件を指揮したとされるアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンが11年5月にパキスタンの隠れ家で米軍に殺害され、11年末には米軍がイラクから完全撤退するなど、9.11事件から10年を経て中東の政治地図は大きく変化することになった。