2008年に深刻化したアメリカ発の金融危機、リーマン・ショックはヨーロッパに波及し、ユーロ圏の脆弱性を明るみに出した。09年ギリシャで財政収支の粉飾があった事実が公表され、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインといった財政悪化国からユーロ圏全体へとソブリン・リスク(国家債務の信用リスク)が伝染する危険が取りざたされるようになった。翌年5月、欧州連合(EU)などがギリシャ支援策をまとめ、欧州金融安定化基金(EFSF)を創設したが、ギリシャ国内では財政緊縮策への政治的反発が続き、11年7月には再び危機に陥った。ドイツとフランスを中心に追加支援策がまとめられたが市場の信頼は回復せず、信用不安の連鎖が拡大し、ギリシャ、イタリア、スペインで政権交代が相次いだ。ユーロへの通貨統合には、金融面で統合されている一方で財政面では国別に運営されていることや、域内の経済格差を埋める人的移動が十分でないことといった構造的欠陥があり、11年12月にはドイツとフランス主導で各国の財政規律を厳格化するよう欧州条約を改正する方針で合意された。しかし当面の金融不安を解消するだけの信用供与に乗り出す国はなく、ユーロ圏の解体やヨーロッパ発の世界不況といった危険をはらんだ不安定な状態が続いている。