通信ネットワークの発達によって、通信情報が行き交うサイバー空間が人類の新たな活動領域として捉えられるようになった。とりわけ1990年代以降のインターネットの爆発的普及によってサイバー空間が社会の不可欠なインフラと見なされるようになると、明確な管理者のいないこの領域の安全を対象とするサイバーセキュリティーへの関心が高まってきた。事実、2010年にはグーグルに対する高度な侵入で中国反体制活動家の個人情報が探られ、またウィキリークスによる大量の秘密情報リークが起きるなど、サイバー攻撃の影響の大きさが印象づけられた。11年にはソニーのネットゲーム情報がハッカー集団に攻撃され、また政府および防衛産業に情報流出ウイルスが侵入するなど、日本にとっても深刻な影響が起きている。09年にアメリカが軍内にサイバー・コマンドを設置するなど各国とも対応を急いでいるが、匿名性が強いサイバー空間の性質、脅威の多様性、技術的進歩の早さなどから十分な対策に至っていないのが現状である。