近年、東アジアでは領土問題が政治的緊張を高めるようになっている。2012年8月10日、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が大統領としては初めて竹島(韓国名 独島)に上陸し、日本は強く批判した。9月、日本政府が尖閣諸島(中国名 釣魚島)を所有者から買い取り、国有化した決定に対して中国は激しく反発し、中国各地で反日デモが行われ、一部は現地日系企業の略奪や日本関係者への危害行為にまで至った。7月にはロシアのメドベージェフ首相が大統領時代から数えて2回目の国後島訪問を行い、日本は抗議した。中国、台湾、東南アジア諸国の領土的主張が競合する南シナ海では、中国とフィリピンの間では南シナ海のスカボロー礁(中国名 黄岩島)をめぐり艦船が数カ月間にらみあう事態が起きた。これまで棚上げされてきた領土紛争が顕在化した背景として、台頭する中国のナショナリズムと軍備増強が緊張を強めていることに加え、海洋資源への関心の高まり、各国とも国内政治経済状況が不安定化しており、対外政策での強硬論が歓迎される傾向が強まっている。東アジアには国際紛争を平和的に解決するメカニズムが不足しており、こうした緊張の高まりが軍事紛争に至る懸念が強まっている。