2011年にアラブ諸国で起きた革命の結果、中東地域の政治的不安定が深刻化している。エジプトではイスラム主義を掲げるムスリム同胞団と世俗的政治勢力や軍部が対抗する二極構造が顕在化した。12年6月の大統領選挙では軍部の圧力に抵抗したムスリム同胞団のモルシが大統領に選出されたが、モルシは11月に新憲法案を強行採決し、反対デモを招いた。より深刻なのはリビアであり、カダフィ政権崩壊後、治安情勢が悪化し、カダフィ政権下で抑圧されてきたアルカイダ系イスラム・テロ組織が勢力を増している。チュニジアでも経済情勢は深刻化し、リビア、アルジェリア、マリに広がる西サハラ地域ではテロ組織が活発化し、マリへのフランス軍の介入やアルジェリアでの天然ガス・プラントでのテロ事件への関与も推測されている。アサド政権と反アサド派の内戦状態が続くシリアでも国連は12年の民間人の犠牲者が6万人を超えたと推計している。欧米は独裁政権に反対するものの民主化を支援する十分な余力がなく、中国・ロシアはシリアへの介入に反対している。アラブの春は総じて中東政治の混迷と不安定を招きつつある。