シリアでは2011年からアサド政権と反政府勢力の間の武力紛争が続き、両勢力とも国外からの支援を受けて被害が拡大し、13年7月には国連が死者10万人以上との推計を公表した。6月のG8サミットでは米欧がアサド政権打倒を表明することは避けつつ介入の可能性を探ったが、アサド政権を支援するロシアとの間で対立が解消されなかった。8月、シリアで大規模な化学兵器被害が報じられ、アメリカのオバマ政権はアサド政権側の化学兵器使用と断定して英仏と軍事的制裁を行う方針を明らかにした。しかしイギリス議会で武力行使反対が多数を占めてイギリスのキャメロン政権は介入を見送り、オバマも議会に介入の意思決定を委ねる異例の方針転換を行った。さらに9月9日、ロシアはアサド政権に化学兵器禁止条約への加入と化学兵器の廃棄を呼びかけ、アサド政権が応じたことで事態は展開した。政権の化学兵器は化学兵器禁止機関の管理下に置かれ、生産設備は破壊された。しかしシリア内戦は収束の兆しがなく、また、オバマ政権の対応の混乱はアメリカの対外政策に対する信頼感を低下させた。