2013年6月のイラン大統領選挙で、穏健派のハサン・ロウハニが保守派の候補を抑えて当選した。高い投票率となった1回目の投票で過半数を得たロウハニの圧勝であり、核開発問題で欧米と対立し、経済制裁を受けて経済の混乱が続く状況への不満が根底にあるとみられた。公約で対外関係の改善と経済回復を訴えたロウハニは8月の大統領就任後、核問題について米英独仏中ロとの協議を進め、11月24日、イランが核開発計画の一部を縮小し、制裁の一部解除を行う暫定合意が成立した。この合意は小規模であり、今後の見通しはまだ不透明だが、保守派政権が敵視してきたアメリカとの対話にロウハニが積極姿勢を示していることは確かな変化である。他方、イランに強い警戒心を示してきたイスラエルを始め、イランの影響力を恐れてきたサウジアラビアやエジプトなどではイランと欧米との雪解けへの不満が募っており、中東情勢の流動化につながる可能性もある。