飛来する弾道ミサイル(推進装置によって大気圏外に打ち上げられた後、真空の大気圏外を慣性力で飛んで目標に到着するミサイル)を人工衛星、レーダーなどで探知・追尾し、これを迎撃・破壊するための兵器システム。弾道ミサイル防衛(BMD ; Ballistic Missile Defense)システムともいう。1960年代、アメリカとソビエト連邦は核爆発によって大陸間弾道ミサイル(ICBM)を迎撃するABM(Anti-Ballistic Missile)システムを開発した。80年代に入ると、人工衛星に搭載したレーザー兵器や迎撃ミサイルによって、飛来する弾道ミサイルを破壊する戦略防衛構想(SDI ; Strategic Defense Initiative)がアメリカで浮上したが、実現には至らなかった。冷戦終結後、ソ連の脅威に代わって戦域弾道ミサイルの拡散が大問題となったため、アメリカでは、限定的ミサイル攻撃に対する地球規模の防衛構想(GPALS ; Global Protection Against Limited Strikes)が計画された。MDシステムは敵弾道ミサイルの迎撃段階やその種類によって区分される。迎撃段階には、敵弾道ミサイルが発射された直後の加速上昇(ブースト)段階、大気圏外を慣性力で飛ぶ(ミッド・コース)段階、大気圏に再突入して落下する(ターミナル)段階がある。種類による区分では長距離のICBM(秒速約7キロ)を迎撃する戦略ミサイル防衛(アメリカ本土ミサイル防衛システム、ロシアのA-135システム)、中距離の戦域弾道ミサイル(Theater BM、秒速約3キロ)を迎撃する戦域ミサイル防衛(アメリカのTHAAD、ロシアのS-400システム)、短距離の戦術弾道ミサイル(Tactical BM、秒速1.5キロ以下)を迎撃する戦術ミサイル防衛システム(アメリカのPAC-3システム、ロシアのS-300Vシステム)がある。