軍事用語としての重心は、クラウゼヴィッツが「敵対関係にある国家や集団のすべてのパワーと行動の要(かなめ)」を物理学の重心に例えたのが起源。現在の重心の特性は次のとおり。(1)国家や集団の物理的・精神的なパワーの源で、これを確保する限り、物理的強さ、行動の自由、戦う意思を保持できる。(2)その数は、理論的には、各戦争レベルにただ一つ存在するが、現実には、事前に特定することが困難なため、複数選定される。(3)攻撃者はこれの破壊・無力化・弱体化・利用に、防衛者は防護・堅固化・機能向上に主要なエネルギーを注ぐ。(4)脆弱(ぜいじゃく)である。(5)軍事行動の間、変化する。重心として具体的に特定されるものは、戦略レベルでは、軍隊、同盟国、政治・軍事指導者、国民の意思、作戦レベルでは、精鋭・主力部隊、政治的・経済的・社会的システム、情報システム、インフラシステムになる。