先富論(先に豊かになれるものからなろうというもの)による経済発展、近代化建設は、次第に沿海地域と内陸(特に西部)との経済格差を拡大し、社会格差も深刻化した。そこで1999年、西部地域の経済発展を促すことを目指した国家プロジェクトが「西部大開発」である。「インフラの整備」「生態環境の保護」「産業構造の調整」「科学技術・教育の発展」を重点計画としている。当初チベット、新疆、青海、貴州、四川、陝西など本来の西部10の省・自治区を対象にしていたが、過大な期待が膨らみ、やがて内モンゴル、広西チワン族自治区も含むようになった。ハード、ソフト面でのインフラの整備・強化を通して、将来の内外資本の導入を狙った長期的な構想。鉄道・高速道路・空港の建設、天然ガスなど自然資源開発、生態系保護の植樹プロジェクトなど、10大プロジェクトが取り組まれている。また、黄河流域の深刻な水不足解消を目指し、豊富な水量の揚子江の水を3本の大運河建設によって黄河に導く南水北調構想や、新疆・甘粛・青海や四川に埋蔵されている豊かな天然ガスを東部沿海工業地域に運ぶための長大なパイプライン建設「西気東輸」なども、西部大開発の目玉とされている。