高度経済成長を続ける中国でここ数年来、農業・農村(住民)と工業・都市(住民)の間で深刻な格差が目立ち「三農(農業・農村・農民)問題」がクローズアップされている。社会主義新農村建設は2005年10月の共産党第16期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で打ち出された三農問題に対する胡温政権の基本的な指針で、「生産の発展、生活のゆとり、文化的な気風、農村の環境整備、民主的な管理」(生産発展、生活寛裕、郷風文明、村容整潔、管理民主)を目指している。同年11月下旬の中央経済工作会議でも、第11期5カ年計画でもキーワードとなった。また04年以来「中央1号文件」(その年の最重要課題を示す通達)は7年連続して「三農問題」に関する内容がテーマとなった。社会主義新農村建設では具体的には(1)財政の建設資金の農村への傾斜、(2)郷鎮機構、農村義務教育、県郷財政体制の改革など、農村総合改革の全面的推進、(3)農地の転用の抑制など土地管理の強化、(4)出稼ぎ農民の権利保護などの環境改善などである。06年から農業税の廃止などすでにいくつかの政策が実施されている。しかし、農村幹部らの不当な土地没収や経費徴収などに対する農民の不満は後を絶たず、ここ数年農民暴動は増加しており、「三農問題」は依然深刻である。共産党は実情を受けて、08年10月に第17期3中全会を開いて集中的に討議し、「農村の改革・発展の推進についての若干の重大問題に関する決定」を採択。2020年までの改革・発展の基本目標と任務を確定するとともに、農民の土地使用権(経営権)を譲渡・交換・賃貸など様々な方法で移転できることを建国後初めて公式に承認した。