2008年8月、北京で過去最大規模のオリンピックが開催された。アジアでは東京、ソウルに次いで開催されるもので、その意義はスポーツにとどまらない。第一には一層の経済発展の促進力となった。10年の上海万博と連携し、海外および国家規模の投資、企業誘致などの加速、交通・都市インフラの充実・整備、雇用の創出が進められた。第二はしかしそれ以上の狙いとして国威と民族団結の発揚があった。アメリカを抜いてメダル獲得数トップとなった成果は民族のプライドを刺激し増大する社会不満をやわらげる効果をもった。第三は台湾からの直行便の増加など、交流拡大の機会を増やし、民族の一体感を強調した。そして第四にそうした競技全体の政治的効果は、張芸謀が演出する開幕式に象徴されるように、「中華民族の偉大な復興」(02年第16回共産党大会で強調)の実現を象徴するものとなった。しかし、開催前の世界各地での聖火リレーをめぐり、チベット民族やウイグル民族による反中央の暴動や紛糾が発生し、さらには西側諸国の政府、市民も中国当局の高圧的な対応に抗議。またオリンピック開催期間は異常なまでの警戒態勢による厳しい緊張が生まれた。中国の政治体制に対して、ある種の強権主義的なイメージも強まり、今後の「尊敬を受ける責任ある大国」への道には大きな課題が残った。上海万博は、10年5~10月に上海において開催され、190カ国と56機関が参加し、入場者総数も7308万人となり、ともに史上最多を記録し成功裏に終わった。