トウ小平の唱えた「先富論」「市場化論」によって中国は確かに目覚ましい経済発展を実現したが、それは公平・平等を重視する社会主義とは程遠い富者と貧者、都市と農村、沿海と内陸のはなはだしい格差を生み出し、さらに発展の過程で腐敗・汚職など深刻な不平等・不公正を生み出していった。こうした状況を極めて厳しく受けとめた胡錦濤・温家宝指導部は、継続した経済発展を堅持しながらもこういった格差の是正、自然と人間との調和の取れた発展、いわゆる「和諧社会」の実現を目指すことこそ理にかなった発展であると主張するようになった。「人民日報」によれば「科学的発展観は2003年に初めて打ち出された。近年中国では経済の急成長と同時に、過度の資源消費、環境破壊、貧富の格差の拡大といった問題がますます激化している。科学的発展観は経済・政治・社会・文化・環境の発展における統一計画と各方面への配慮の両立を、一層重視することを要求する」と説明している。これがいわゆる科学的発展観であり、07年の17回共産党大会での党規約改正の目玉として盛り込まれた。