2012年11月、中国共産党第18回全国代表大会(党大会)が開かれ、習近平を党総書記に、習近平・李克強ら7人の政治局常務委員会委員、25人の政治局委員が決定され、彼らを中心とした国家、行政、軍などの指導部が、13年3月の全国人民代表大会(全人代)で正式に決定し、習近平体制が本格的にスタートした。政治局常務委員は前回の9人から7人に減り、胡錦濤前総書記と直接につながる共青団(共産党の下部組織)系は李克強のみとなり、一見保守色の強い布陣になったように見える。しかし、李克強の国務院総理をはじめ、共青団系は李源朝が国家副主席に、汪洋と劉延東が国務院副総理に、周強が人民法院院長に就任し、17年の第19回党大会で定年により引退する5人の常務委員に代わって、最高指導部に浮上する可能性を残した。習近平指導部は、対外的には「大国としての風格」を示しながらも、国際社会への影響力を増大させるよう、強硬と柔軟とを巧みに使い分ける外交戦略を展開している。例えば13年4月のボアオ会議では、「地球村を共に発展を求める大きな舞台にする。各国間の対立・摩擦は不可避だが対話・平和的な交渉で矛盾と相違を解決していく」と力説し、同年10月の周辺外交工作座談会での講話では「隣国と睦まじくし、隣国を安んじ、隣国を富ませることを堅持する」と強調した。しかし他方で、領土・領海問題で一方的に自己の正統性を主張し、領空化につながるような防空識別圏の一方的設置、海軍の増強など強硬路線を推進している。国内的には、貧富の格差の一層の拡大、大気・水汚染など環境問題や腐敗・汚職の深刻化、これらに対する市民・知識人らの繰り返される激しい抗議などによって社会の不安定化も進んでいる。そのため習近平政権は、腐敗の徹底的な取り締まり、経済成長の維持に加えてネット世論や穏健な市民運動と見られた「新公民運動」など、言論・社会運動に厳しい規制・弾圧を行い、社会統制を強めている。13年11月の党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)では、国家安全委員会と「中央改革全面深化領導小組」が新たに設置されたが、結局この2つの組織のトップにはいずれも習近平が就任した。まさに習近平への権力の集中であり、共青団グループとの関係がどのようになるか、今後の注目点となった。