建国以来、中国は愛国主義を積極的に鼓舞してきたが、とくに1982年憲法では、国家は「人民の間で愛国主義、集団主義、国際主義の教育を行い」、95年の教育法でも、「国家は教育を受ける者に、愛国主義、集団主義、社会主義的教育を行い」と定めている。さらに共産党中央は、94年に「愛国主義教育実施綱要」を発表し、「愛国主義は中国人民を動員し鼓舞して団結奮闘する一つの旗印であり、我が国社会歴史の前進を推進する巨大な力であり、各民族人民の共同の精神支柱である」とうたい、その具体的な実施に力を入れるようになった。具体的には、学校での愛国主義教育授業、映画・テレビ鑑賞、各地の記念館への参観などにより、中国の優れた伝統や中国革命、日本など外国侵略への英雄的な戦いなどをたたえる青少年に向けた広範な教育活動が展開されるようになった。97年には、全国に愛国主義教育基地が設立され、こうした活動をより組織的に実施するようになった。日本との関係でいえば、盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館、ハルビン市にある侵華日軍731細菌部隊罪証陳列館、南京市にある侵華日軍南京大虐殺偶難同胞記念館などが有名である。30歳代、20歳代の中国の若者は、日本のアニメ・漫画などの影響を強く受けて対日感情も悪くないといわれているが、他方でこうした共産党による強力な愛国主義教育によって、反日感情も埋め込まれるようになり、アンバランスな対日感情を持っているともいわれている。また、「尖閣問題」によって中国で反日デモが激化、激しい反日世論が高まる中、その背景に愛国主義教育の影響があるといわれるようになってきた。